逃亡者 The Fugitive
1993 America 130mins
監督 アンドリュー・デイビス 製作総指揮 キース・バリッシュ、ロイ・ハギンズ
脚本 ジェブ・スチュアート、デヴィッド・トゥーヒー 撮影 マイケル・チャップマン
音楽 ジェームズ・ニュートン・ハワード
出演 ハリソン・フォード、トミー・リー・ジョーンズ、ジュリアン・ムーア、ジョー・パントリアーノ






--------------------------------------------------------
 高級な邸宅に住む女性ヘレン・キンブル(セラ・ウォード)が強盗によって頭蓋骨を鈍器で殴られ死亡した。
 容疑者として、夫のリチャード(ハリソン・フォード)が警察官に連行される。リチャードは、シカゴ記念病院に
 勤める優秀な医者。警察官によって連行される様子は、既に辺りを取り巻くマスコミ・TVカメラによって、
 全米中に流れた。
 1月20日、午後0時前に遺体は発見された。彼女は強盗に入られた瞬間、自ら警察署に電話し、助けを求め
 ていたのであった。

 ヘレンとリチャードは夫婦そろって夕方まで、小児医療研究基金の為のパーティーに出席していた。
 退屈なパーティーを抜けだし、車で帰宅する途中、突然リチャードの携帯電話に連絡が入る。当直の出頭医
 スティーブンスが大がかりの手術を行うため、リチャードに応援要請の為に連絡してきたのである。仕方なく
 彼はヘレンを自宅に残すと、自らは病院へと向かった。手術する男の担当医は、カルテを見るとレンツ
 (デヴィッド・ダーロウ)である事が分かる。しかし幾ら携帯に連絡を入れようとも、全く反応が無かったので
 あった。リチャードは先ほどのパーティーで、彼の姿を見ていただけに、余計もどかしく感じたのだった。
 そんな手術を終え、自宅に戻ると妻は強盗に襲われており、既に虫の息。逃げる途中、リチャードは強盗と
 格闘しもつれ合うものの、彼は妻の様態を優先し、処置を施そうとしたのである。しかしそれも空しく、妻は
 目の前で息絶えたのだった。

 ベルモントの第6地区にあるシカゴ警察署で事情徴収を受けるリチャード。その担当は、署でもベテランの部
 類に入る刑事ケリー(ロン・ディーン)である。若者の警察官も、この事情徴収を窓越しに見ていた。
 格闘した相手は、35歳前後の右手を義手にしている男であると、格闘したときの状況を克明に説明する。
 しかしシカゴ警察の調べによると、リチャードが仕事上・友人関係でのトラブルは抱えておらず、現場の警察官
 が彼の自宅を調査した結果、防犯装置にはなんら落ち度のないことを指摘した。更に鑑識によると、遺体の
 近くに落ちていた銃には、リチャードの指紋が無数にあり、死体の爪の中には彼の皮膚組織が検出されて
 居たのである。更に、妻の実家が資産家という事もあり、もの凄い金額の保険金を妻にかけていたのだった。
 当然その受取人はリチャード。ケリーらはそれらの情報を踏まえた上で、彼を最重要容疑者として認知し、
 告発することにした。
 陪審員制度により、法廷の前で審理にかけられるリチャード。盗難もなく、強盗事件としては考えにくいとして
 第一級殺人の罪で、死刑が確定したのであった。イリノイ刑務所に投獄後、警視総監の指示に従い、刑に
 処されることになった。

 刑務所に収監されたリチャードは、刑務所に連行される為、護送車に乗る。同じく搭乗していたのは、重罪の
 罪で捕まったカールソン(Thom Vernon)パーティタ(ケン・モレノ)コープランド(エディ・ボゥ・スミスJr)だった。
 順調に刑務所までの道を走り、残り35Kmをきったところで、突然事態が急変する。
 囚人全員が目配せしたかと思うと、突然カールソンが苦しみ藻掻きはじめ、仕舞いには口から泡を吐いて
 倒れたのである。すぐに看守のものに連絡し、助けるよう求めるが、彼らが近づくと突然態度を一変させ、
 看守に襲いかかったのである。それに驚いたもう一人の看守は、手にしていた銃を発砲する。しかしその時
 突然の車の横揺れに体制を崩し、運悪く流れ弾がドライバーの胸を直撃したのであった。
 舵を失ったバスは曲がり角で横転し、そのまま崖を転がり落ちてしまうのだった。

 リチャードは気がつくと、看守の一人が医者である彼に助けを求めてくる。傷ついたものたちの容体を調べる
 為手錠を外してもらうと、その時遠くから汽笛のような音が聞こえることに気がつく。なんと護送車が転げ落ち
 た先は、汽車の線路の上だったのである。
--------------------------------------------------------

 妻殺しの容疑をきせられた医師リチャードが、警察官の捜索をかいくぐり、真犯人を追っていく。
 果たしてこの事件の裏に隠された事実とは!?
 TVシリーズとして50年〜70年代にかけて海外ドラマとして放映。

 あれよあれよと言う間に目まぐるしく展開が変わり、2時間10分という放映時間が短く感じられました。
 ハリソン・フォードの映画は、どれもテンポが良くて感情移入がしやすくて面白いですね。

 何度が定期的に訪れる山場のシーンがとてもスリリングで刺激的。
 これも脱獄犯として追われる立場から、追う立場へと変貌し、終始警察から捕まる危険性を孕んでいる為の
 もの。せわしい町の喧噪、プライバシーと言う名の他人の領域には決して入り込まない無関心な現代社会
 と言った如何にも現代社会っぽい特徴を上手く舞台に盛り込み、都心におけるコンクリートジャングルでの追
 走劇は、いろんな意味で楽しめます。

 この映画では、主人公二人の人間性に迫る演出が至るところでなされていますよね。
 この主人公に関わる人物を限りなく腑抜けたような、ある意味機械的な対応しか見せないようにしたことに
 この二人の人間性が浮かび上がらせています。

 追われる側の医師・リチャードは、妻殺しの容疑を着せられるわけですが、殺しの動機は
 全くといって無く、警察の対応といったら、それはもう酷いです。シカゴ警察の事情徴収、
 そして護送される際の看守の人間性を問うような無責任な態度。更に、後の逃走劇(追
 跡)中に子供を助けるシーンでは、ハリソンとは対称的に無能な医師さえ出現させてい
 ます。
 逆に追う立場の連邦保安官のジェラード。脱走者を捕まえると言う事に妥協せず、如何
 に固執しているかが伝わってきますが、この自分の職務に忠実な人物像を作り上げた反
 面、追跡劇中に周りの味方とも言うべき警察官たちの間抜けさを見せつける事で、容疑
 者を逮捕することで、逆に無実を証明する為に捕まえるという事を捜査劇の中でも見えて
 きます。
 

 そもそもこの映画では、追う立場が有能である事と、更にはそれを上を行く逃亡者像が必要です。
 容疑者は、”逃げる”だけでなく”追う”仕事を同時にこなさなければなりませんからね。
 容疑者不明の中で、病院のコンピュータリストの中から、容疑者を特定するために条件を絞っていくのですが、
 弾き出された数値の差が、まさにこれを証明しています。

 また冒頭のリチャードの殺しに関して、如何にその動機と容疑者を隠していくかにこの映画のおもしろさが
 詰まっています。

 個人的に脇を固めている俳優の中に、ジョー・パントリアーノやジュリアン・ムーアなど魅力的な俳優さんを
 使っている事は嬉しいのですが、映画では主人公の二人だけのドラマとなっていて、あくまで脇役は脇役で
 しかない所もこの映画の魅力ですね。

 アカデミー賞では、作品賞、撮影賞、作曲賞、音響効果編集賞、編集賞、録音賞にノミネートされましたが、
 受賞したのは、助演男優賞(トミー・リー・ジョーンズ)のみ。
 更に、LA批評家協会助演男優賞とゴールデン・グローブ助演男優賞を受賞しました。
 編集賞くらいはあげても異論は無いような気がしますが、この年のスピルバーグとピアノ・レッスンは強かった
 です(笑)




出演

医者    
ハリソン・フォード リチャード・D・キンブル 妻殺しの容疑をきせられる。医者、心臓動脈関係。
セラ・ウォード ヘレン・キンブル 1月20日、義手の強盗に殺されてしまう。
ジュリアン・ムーア アン・イーストマン 医者。リチャードが持ってきたサンプルを検証。
ジェローン・クラッベ チャールズ・ニコルス リチャードの上司。主人公に非常に協力的。裏が有るのか?
ジョン・M・ワトソン ボーンズ・ルーズベルト リチャードがサンプルを取りに行く。
マーガレット・ムーア ニコルスのアシスタント  
デヴィッド・ダーロウ アレック・レンツ 新薬を開発。製薬会社マクレガー社と関わり合いがある。
ジェーン・リンチ キャシー クック郡立病院の医者。
Bruce L.Gewertz ブルース  
連邦保安官    
トミー・リー・ジョーンズ サミュエル・ジェラード 連邦服保安官。通称ボス犬
ジョー・パントリアーノ コスモ・レンフロ ラストでチャーリーに鉄骨でやられる(笑)
ダニエル・ルーバック ビッグス 金髪。
L.スコット・コールドウェル プール 黒人女性。
トム・ウッド ノア・ニューマン コーヒー係にさせられてるし(笑)
Dru Anne Carlson ジェラードの秘書  
ジョニー・リー・ダベンポート ヘンリー 黒人
マイク・バカレラ スティーブンス  
デビッド・U・ホッジス デビッド  
シカゴ警察    
ロン・ディーン ケリー 事情徴収が適当。犯罪を押し付けた人。
Joseph F.Kosala ロセッティ 同上。
ミゲル・ニーニョ 警官#1  
トニー・フォスコ 警官#2  
Joe Guastaferro 検死官  
その他    
アンドレアス・カトスラス フレデリック・サイクス 元警察官45歳。殉職中右腕怪我で義手。
ジョセフ・F・フィッシャー スローマン  
James Liqutuad ポール ホテル、サービス。
ディック・キューザック ウォルター  
アンディ・ロマーノ ベネット判事  
Thom Vernon 囚人カールソン 脱獄しようと泡を吐く。
ケン・モレノ 囚人パティダ  
エディ・ボゥ・スミスJr 囚人コープランド 黒人。脱出成功。女性の家に居るところをジェラードに撃たれる。
リリー・リチャードソン コープランドの彼女  
ニック・サーシー ローリングス保安官 脱走した場面を取り仕切る地方警察官。
Peter J Caria IV ビリー  
Jpseph Rotkvich ジョセフ  
Steven Lilovich スティーブ  
カースティン・ネルソン ベティ  
Marie Ware 看護婦グラディス 郡立クック病院
オーランド・ガルシア デスモンド 管理室従業員。リチャードが身分証明書を盗む。
Joe Guzaldo 検察官 妻殺しの裁判
Nicholas Kusenko 被告側弁護士  
ジョアン・コーン 起訴側弁護士  
Tom Galouzis 外科医  
James F. Mckinsey 外科医  
マーク・D・エスピノーザ 研修医  
ジョン・E・エリス 麻酔医  
モーリス・パーソン 囚人クライブ・ドリスコル 義手のリストから絞り込んだ容疑者。リチャードが直接会いに行く。
フランク・レイ・ペリーリ 看守 リチャードを含む4人の囚人の護送
オーティス・ウィルソン 看守  
ジム・ウィルケイ 護送車ドライバー 銃の流れ弾が当たる
ダニー・ゴールドリング イリノイ州警察署長  
ケヴィン・クロウレイ 州警察官  
シンシア・ベイカー   逃げてきたリチャードが道を歩いていた所、車に乗せてくれる。
Monika Chabrowski 大家 リチャードに部屋を貸す。
Lonnie Sima 大家の息子 麻薬販売で逮捕される。
ジョエル・ロビンソン ジョエル 緊急に運ばれてくる。リチャードがカルテを見て診察。
Greg Hollimon   病院内でローラースケートを履いた人
Theron Touche Lykes   病院にて






inserted by FC2 system