アンタッチャブル The Untouchables 1987年 アメリカ 監督 ブライアン・デ・パルマ 製作 アート・リンソン 脚本 デビッド・マメット 美術 ウィリアム・A・エリオット 音楽 エンニオ・モリコーネ 出演 ロバート・デ・ニーロ、ショーン・コネリー、ケビン・コスナー、アンディ・ガルシア |
1930年、禁酒法はシカゴをギャング戦争の街へと変えた。10億ドルの密売市場のあがりを巡って、
各組織は手投げ弾と機関銃で血の抗争を続けた。それは、ギャングの時代・・アル・カポネの時代・・・
実質的なシカゴ市長は誰が見てもあなただ!・・マスコミの目は、整髪するアル・カポネに向けられていた。
しかし、カポネは動じることなく記者に向かって言う。市民は俺を必要としている・・何時の世も人は酒を飲む。
口先では密売酒を非難しながらも高級住宅地のお偉いさんは酒を飲む・・これは避けられない事実だと。
記者からは更に厳しい質問が飛び交った。そのビジネスに暴力を持ち込み、不買業者を痛み付けている
のではないか?と。 すると彼はあっさりしたように、”人は優しい言葉よりも銃の言うことを聞くもんだ” と
苦笑するのだった。しかし、それは暗黒街での出来事で自分とは無関係だと威厳のある声で話すのだった。
一方スーツを着込んだ男が街の酒場に営業に訪れ、いつものように商談がなされていた。もう、このような
インチキなビールは家では買い取れない。店主はそう話すと、この営業マンに引き取りを願う。店には、
数人の客と、親のお使いで訪れていた少女がいた。仕方なくその場を後にする男は、持ってきたカバンを
さり気なくイスの上に残していく。カバンを忘れた事に気が付いた少女は、男にそのカバンを届けようとする
が、次の瞬間、店は大爆発を起こし辺り一面黒煙が立ちこめるのだった。
”ビール戦争に10歳の少女が犠牲になる”・・新聞記事を目を通し心を痛める男・エリオット・ネスは、
今日、ここシカゴに財務省の特別捜査官として送られた役人だった。妻に送られネスは出社する。
そしてシカゴ市当局は要請を受けて、財務省はこれより警察と連携して、密売酒とそれに絡む暴力事件の
対処に乗り出すと発表した。マスコミの目はネスに向けられる。これは、おざなりの調査なのか? 具体的な
プランは? 選挙のための政治的策略なのか? と、次々とネスに質問が向けられるのだった。
禁酒法はあくまでも国の法律である!そう強調し、彼は避けるように退室する。
警察署では、アルダソン警部補に部下を紹介され、彼らが集まる場所に向かうと、彼は皆の前で法の執行者
がまず範をたれるのだと発言した。
財務省は既に内偵を進めている・・・大量のウィスキーの入荷がカナダから行われるというと、まずはこれを
取り締まるのを目標にした。
ネスは警察官を多数引き連れて倉庫を訪れる。既に潜入する捜査員から、目印となる物を聞かされていた。
タイミングを計って突入する機会を待つ。そしてネスは正面から切れ込むために、ブルトーザーに乗り込んだ。
突入の合図と共に、彼は倉庫をぶち破って突入する。そして、目印の木箱を近くにあった斧でぶち破ると
中には、酒ではなく輸入された傘が入っていたのだった。
一杯食わされた・・大々的にこの失態が新聞に掲載され落ち込むネスは、橋の上にいた。すると後ろから
男が声を掛けてくる。ネスは慌てて懐から護身用の銃を取り出そうとするが、男の警棒でそれを制しようと
する。男は巡回中の警察官・マローンだった。職務質問され、ネスは財務省の人間だというとマローンは
納得したように頷き、その場を後にしようとする。すると逆にネスがマローンに質問する。何故銃だと分かった
のか?言葉だけで、目の前の男を信用するのか?と。 すると、男は信条としている言葉”警察官は毎日
生きて帰ること”を話すと去っていった。
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エリオット・ネスを中心として、敏腕警察官マローン、財務官ウォレス、警察学校の新人ストーンが
暗黒街シカゴのボス、アル・カポネの悪事を暴くため日夜奔走する。役人までも買収される中、如何に
彼を追いつめ一掃を計るのか!? ラストの30分は映像美、ブライアン・デ・パルマの手腕が発揮
されている作品。
ケビン・コスナー、ロバート・デ・ニーロ、ショーン・コネリー、アンディ・ガルシアが出演・・・うーん
出演に対するギャラは一体幾らになってしまうのでしょうか?(^^;と、心配してしまう映画ですが、
映画では、この中の誰でもなくウォレスを演じたチャールズ・マーティン・スミスが良い味を出していた
様にも思えます。
禁酒法が施行されたシカゴの市場を狙って利益を企む、ロバート・デ・ニーロ扮するアル・カポネ対
これ以上悪を蔓延らせない為にも、国を挙げての捜査が必要だという事で査察を開始するケビン・
コスナー扮するエリオット・ネスを始めとする4人の男・アンタッチャブル。まさにこのメンバーは現在の
トマスモアの再来のような人たちで、いかなる権力・圧力そして賄賂にも屈しないような人格を持った
人たちの壮絶な戦いの物語です。
マフィアとの戦いということもあって、過激な描写・血生くさい演出が要所に盛り込まれており、全体を
通して緊張感溢れる映画であると思います。
冒頭では、抗争の被害者として、まず10歳の少女が生け贄とされてしまいます。しかし、この映画では
全体としてアル・カポネの権力とそれに対抗するアンタッチャブルだけがクローズアップされすぎた感じ
がします。この後、アンタッチャブルの始めの作戦が失敗して他人事の様に失笑だけを買うシーンが
あるんだけど、どうも部外者意識だけが先行して周りの世論や禁酒法という憲法・法律を考えないて
いないシーンが多いです。これだけ巨大化した組織に対してアンタッチャブルらが全て彼らが殲滅させ、
手柄を得た感覚だけが残ってしまう・・実際は、恐らくこれ以上悲劇を起こさないためにも、沢山の人が
バックアップしたシーンがなければ、とてもじゃないけどやりきれないのですよね。
カナダの国境で地元の警察らと協力して、尻尾を掴むために待ち伏せしたシーンでは、無理矢理
彼らの口を割らせるため、既に亡くなった死体を相手に見せつけるように発砲して頭をぶち抜くシーン
をみた警察官は彼らの行動を非難します。咄嗟にこんな方法を考えついてしまうマローン刑事って
一体どんな人物なんですかね(^^;所々で敏腕ぶりを発揮するのですが、何も知らないネスは、
主人公ながら、彼にぶら下がり過ぎているようなキャラクターでしたね。
最後の裁判でのシーンは、全員がアル・カポネ側についていて賄賂を受けていたような感じもしますね。
それを帳簿係が突然裏切ったり、飼い慣らされていた弁護士が突然寝返るというのは、なんとなく今
まで見てきたギャングのファミリー像とは違うような感覚なので不思議な感じがするのですが、逆に
そんな裏切りに取れるシーンは、なんだか不自然に思います。実際は、裁判自体がもっとカポネに
対して圧力を掛けているのではないでしょうか?
帳簿係が捕まるシーンなど、パルマ監督得意の映像美・・1つの空間で緻密に計算されたものを
スローモーションで表し、最もインパクトのあるシーンになっていますが、駅で待ち伏せして見張っている
ネスは、常に時計とこの赤ちゃんの乗る乳母車を気にしています。このシーン見ていると、
スローモーションのシーンよりも更に遅くカメラを回している(実際は高速に回している事になるのかな
(^^;)かのようで、誰もが早く母子をこの場から立ち去ってくれーーと叫んだシーンでは無いでしょうか。
先の展開を視聴者に考えさせる時間を与えさせてくれて、分かりやすいシチュエーションとした所が
良かったですね。またその結果、現実の悲劇的な惨事とは逆に赤ちゃんが微笑んでいるシーンは
全てアンタッチャブル側の作戦が成功した喜びを表現しているかのようで良かったです。
アル・カポネを演じたロバート・デ・ニーロですが、ホント彼の役に対するアプローチは凄いものがあり
ますよね。もちろん、毎回どの映画でも凄いのですが、今回は体重を20Kg以上増やし、髪型を
本人のように真似るために生え際をリアルにしていますよね。
有名なエピソードの一つに、はじめこのカポネ役を、ボブ・ホスキンスが演じていたそうです。殆どの
シーンを撮り終わった後に監督との打ち合わせの結果、カポネ像としては少し違うことを感じて、
デ・ニーロを起用したという事です。そんなカポネだけを変更することって出来るのかなぁとか思います
が、全体的に見て、カポネが他の大物役者と関わるシーンって少ないのですよね(というよりも出演自体
少ないかな・・)。映画は、シーンが細切れになって製作されている為に、そんな芸当が可能になっている
のでしょうかね(^^;
ケビン・コスナー(エリオット・ネス/財務省) ショーン・コネリー(ジム・マローン/警察官) ロバート・デ・ニーロ(アル・カポネ/ドン) チャールズ・マーティン・スミス(ウォレス/経理部) アンディ・ガルシア(新人刑事) 評価:★★★★★★☆☆☆☆ (6.0) |
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