メゾン・ド・ヒミコ 監督／犬童一心 脚本／渡辺あや

--------------------------------------------------------
銀座で文化人や一般人に人気の高かったゲイバーの二代目
"卑弥呼"が引退を機に、古いホテルを買い取り、ゲイ専門の
老人ホームを設立する。そんな卑弥呼はガンで余命幾ばくも
無くなり、彼を慕う岸本春彦は絶縁状態にある娘・吉田沙織
を呼び寄せ老人ホームで働かせることになる。
--------------------------------------------------------

「ジョゼと虎と魚たち」に続いてメガホンをとった犬童一心
監督の作品。

面白いという人とつまらないという人の両極端に分かれる映画。
「ジョゼと虎と魚たち」では思わぬ拾いモノをした感覚に捕ら
われた私もこの作品はイマイチ、ピンと来なかった。

一つ一つの行動と事象の中に複雑な心情が盛り込まれており
如何にも日本的な内容だなと思わせるものの、どんな行動を
取るとその人にとって幸せなのかが実に分かりづらい作品
となっている。

周りはゲイだらけという事もあり、そういう彼らの性的指向
を覗かせる部分に於いては興味深い所は存在する。
ゲイに対して全くの無理解であるゲイの娘・沙織やいたずら
少年のリーダー格の子供が岸本春彦という存在によって
引きずり込まれていく様。興味を引きつけるだけの不思議な
魅力をオダギリジョーは演じていると思う。

気難しく感じるのは親子関係か。
母親の存在を絡ませることでより難しい所へと追いやってしま
った感じもするが、沙織の信頼していた母が最後まで慕って
いた人物が父親という事で、娘に理解を求めているのだろう
か。

印象的なシーンは一カ所だけ有った。
ルビイが脳卒中で倒れた後に思わずゲイが漏らす一言だ。
一緒に住めば寂しい思いをすること事がないと思ったのに、
自分の番を待っている様なものだという。
老人ホームといえども何処か異質な感じのするゲイのホーム
にも同様の心情が存在しており、言葉は悪いがゲイも人の子
だなと感じさせた。

最初はイマイチ塗装業の存在がよく分からなかった。
沙織はこの塗装業を辞めてホームにアルバイトに来ていたと
思ったのに、突然出社したりしなかったりで何なのかと思って
いたら、最後を見ると落書きの為の演出と、沙織が春彦から
欲望の対象に見られなかった事に対する受け皿として存在した。
本当の男性とゲイの男性の愛情や欲望の尺度を上手く比較させ
る為の存在でも有ったのかな。

孫からの葉書が届いていたルビイに対して、どんな意味が有っ
たのだろうか。息子夫婦はルビイのゲイの事実を既に理解
していたのだろうか。ゲイと家族の関わり合いについて、
気難しさの一つとして取り上げたモノかも知れない。それでも
一人一人様々な事情が存在していて、正しい答えや結末が存在
しない点も何処かもやもやした気持ちにさせられる気がした。

オダギリジョー (岸本春彦) ゲイ
柴咲コウ (吉田沙織) 卑弥呼の娘
田中泯 (卑弥呼) ガンで余命幾ばくもない
西島秀俊 (細川専務) 塗装会社社長
歌澤寅右衛門 (ルビイ) ゲイ・脳卒中で倒れる
青山吉良 (山崎) ゲイ・着飾るのが夢
柳澤愼一 (政木) ゲイ・元教師
井上博一 (高尾)
森山潤久 (木嶋)
洋ちゃん (キクエ)
村上大樹 (チャービー)
高橋昌也 (半田利一) 半田興産会長
大河内浩 () ダンスホールの中年男
中村靖日 () ダンスホールの若い男
村石千春 (エリナ) 塗装会社社員
久保麻衣子 (昌子)
田辺季正 (淳也)

評価：★★★★★☆☆☆☆☆ (5.0)